メンタルヘルス、産業医に求められる新しい分野
産業医とは、企業と業務契約している医者である。主に病気と業務との関係性を中立的立場で判断する役割を担うが治療は行わない。その歴史は高度成長期の製造業の工場で働く人々の身体的健康を守る「工場医」から始まった。しかし、近年はホワイトカラーのストレス防止という精神的健康が重要視され、その役割は大きく変化している。
身体面は科学的データを基に判断することも可能であるが、精神面は例えばストレステストのように結果に被験者の主観が入るものには実際の症状が反映されないケースも出てしまう。的確な判断には、時間をかけた対話がどうしても必要になる。
「うつ病」の特徴は、落ち込む、涙ぐむ、眠りが浅い、普段より2時間以上も早く目覚める、いつも楽しんでやっていることが楽しくない、食欲が湧かないなどの症状が起きる。この段階できちんと専門医に治療を受けないと症状を悪化させてしまう。
当院でも何らかのストレスが病気の症状に現れているビジネスパーソンは多い。ストレスについて自ら話される方もおられる一方で、無意識に隠くそうとする方もおられる。問題になるのは後者である。例えば、症状を聞いていく過程で心療内科専門医に診てもらう方が良いと判断した場合、その説明と病院を紹介しようとした途端、それまでの穏やかな態度が突然攻撃的になるケースもあれば、専門医を紹介しても「改善しない」と戻ってきてしまうケースもある。
うつ病の場合、初診時の限られた時間での診断は難しく、入眠剤を処方するなどの対症療法で診察が終わることが多い。したがって、時間を必要とする心療内科はどこも混み合ってしまう。けれども、ここで諦めて他の病院へいき同じことを繰り返すと、迷路に入り込み症状を悪化させてしまうことになる。重要なことは継続してみることである。
そこで、ストレスを抱えておられるビジネスパーソンには、かかりつけ医や心療内科医に相談することをお勧めしたい。かかりつけの医師であれば精神的な変化に気付きやすいからである。また、部下や周囲にうつ状態の人がいたら同様のことを勧めることも迷路入りを防止するきっかけになると考える。
伊藤 院長(産業医) 2017年12月1日(金)記