季節の変わり目に起こる「帯状疱疹」
季節の変わり目に起こりやすい病気の中で、これまでは直接的に「自然」(気温の低下、太陽の光を浴びる時間)に起因する疾患を書いてきたが、これらの自然の変化に加えて環境の変化が身体に負荷(ストレス)をかけることがある。
仕事がハードだったり、家庭問題などが加わると病気が生じる。最近受診されるビジネスパーソンの中で目立つ疾患の一つ「帯状疱疹」がそれに該当する。
受診のきっかけは「発疹が出た」というケースが多い。中には痛みが生じてからインターネットで調べ「帯状疱疹」ではないかと、皮膚科にいらっしゃる方も増えている。
帯状疱疹は水疱瘡(水痘)と同じウィルスで発症する。水痘が治ったときウィルスが体のどこかの神経節と呼ばれる神経のターミナルに潜伏する。このウィルスは休眠状態で増えることはなく本人は感染していることもわからない。しかし、体調が崩れた時にウィルスは活性化し、神経を通って皮膚に達し水疱を作る。この時痛みが生じるのは、神経細胞を壊しながら通ってくるためである。
典型的な皮疹は小さな水ぶくれだが赤い班や小さな盛り上がりを生じることもある。季節の変わり目は、このウィルスの活性化を促す。このため生じやすくなる。
外来において患者さんから多く質問されるのは、「人にうつるかどうか」だが、ほとんどうつる可能性はないと言える。例外として新生児に発疹をこすりつけると水痘になることがあるが稀である。ただし、臀部や太ももに生じた時は単純ヘルペスとの見分けがつきにくい。
単純ヘルペスの場合は、感染しやすく何度も再発を繰り返すが、初めて発症した時の範囲が広ければ同じ部位に生じた帯状疱疹と同じような分布を示すことがある。この場合、特殊な検査が必要になる。
「帯状疱疹」の特徴といえる痛みについて、ウィルスは時として激しく神経を壊しながら増えることがある。その場合は治った後にも強い痛みが残る。これを帯状疱疹後神経痛とよぶ。なかなか痛みが取れないため早期に抗ウィルス剤を内服する。
最後に注意しなくてはならないのは、疱疹の場所である。参考までに、疱疹が出やすい場所はイラスト通りである。
疱疹の生じ方や場所がさまざまであるため専門医以外では見過ごすことがある。典型的な症例画像(あたらしい皮膚科学から引用)もつけた。
なお、帯状疱疹は体の片側に生じるが、両側まで広がって生じた場合は体がかなり弱っているサインである。強力な抗がん剤を使っている人に起きることがある。逆に言えば、ガン・悪性リンパ腫・AIDSなど重篤な病気にかかっている場合がある。
特に男性のビジネスパーソンの場合、我慢に我慢を重ねて来院するため、かなり痛い思いをされる。早期治療が効果的なので、早めに受診することを勧める。