遺伝子が関係する薬疹について
薬の服用後に生じる発疹の多くは服用中止等の適切な処置で回復するが、稀に重症化し後遺症に苦しむことがある。
この場合の重症化する薬疹の原因は、特定の遺伝子型と反応し生じることが明らかになってきた。その走りとなったのが、2004年に台湾の研究者によって見いだされた、カルバマゼピンに反応するHLA -B1502(ヒト白血球抗原)だ。
この薬はてんかんや三叉神経痛に用いられるが、服用し重症薬疹を生じた台湾人から発見され、同じ薬で同様の薬疹を生じたほとんどの台湾人からもこの遺伝子型が見つかった。
この薬疹は台湾人ではHLA-B1502を発現している人、日本人ではHLA-A-3101が関係していると言われている。そのため既にカルバマゼピンの注意書きにこの遺伝子型をもっている人は重症薬疹を発現しやすいことが記載されている。
ここで高校時代に習った「メンデルの遺伝の法則」を思い出していただきたいが、ヒトは対立形質の染色体を23対46本持つ。うち1対は性別を決定するものだ。つまり、22対44本の染色体は母親と父親からそれぞれ半分づつ受け継いでいる。
従って、この法則からHLAの遺伝子型は50%子供に遺伝するので、親兄弟がカルバマゼピンによる薬疹を生じていた場合、当然起こりやくなる。
ただし、すべての薬疹が同じ機序で生じるわけではない。しかし、このような重症薬疹は市販のありふれた風邪薬で生じることがあるのだ。
予防方法としては、現在のところは一般外来でこの遺伝子型の検査を受けることはできないため、家族の誰かが市販薬も含めて何らかの薬で薬疹を生じた場合には、医師にかかるようにすることがビジネスパーソンにとって現時点での最良の方法と言えるだろう。
伊藤 院長 2014年11月4日(月)記