余ってしまった処方薬の扱いについて
処方済みの余った薬を服用したが良くならないと受診されるビジネスパーソンがたまにおられる。
また、長期保存したローションや軟膏を塗ったところ、かえって発疹がひどくなり悪化した例も実際多い。
そんな時にビジネスパーソンの余った処方済み薬の保管方法と利用の考え方がふと気がかりになる。
そもそも医師から処方される薬は市販薬(常備薬)と違って特殊なのである。健康保険法の給付のため、きわめて特定の人の特定の疾患に対する限定的な使用目的で供与されるため、なんでも効くという万能薬ではない。また、のみきることが原則で処方されるので、早く治り薬が余っても市販薬(OTC薬)のように返品することはできない。
さらに、処方済み薬の利用はかなり限定されてしまう。頭痛など限られた疾患では処方済み薬の服用は可能ではあるが、「風邪」一つとってもその時の症状や体調が異なれば処方薬も変ってしまうためだ。
それでも、ただ捨てるのはもったいないし、また何かあった時にと、余った処方薬をそのまま保管されている方は大勢おられると思う。
気をつけていただきたいのは、処方薬は剤型が進歩する一方で保管には一層の慎重さが求められている。薬は複雑な構造をした化学物質である。光や温度、湿度で容易に変質し、効力を失いやすい。
特に内服薬は光と湿気が大敵だ。最近増えてきた口腔内崩壊錠は特に吸湿性が強いため、そのような薬は厳重なPTP包装になっている。
包装を破らず涼しい陽のあたらない所で製造から2年以内の保存と思ってほしい。
一方、軟膏や液剤は細菌やカビが繁殖しないように保存料を入れてあるが、その活性はいつまでも続かない。ステロイド剤のローションや目薬は、開封後1ヶ月ほどしかもたないものもあり、最大限2−3ヶ月程度と思ってほしい。
以上のような理由で、なんらかの症状が出て処方済み薬を利用したい場合はご面倒でも受診し処方済み薬の件も合わせてご相談いただきたいと思う。
伊藤 院長 2014年10月19日(日)記